松浦 節『約束の奔流―小説・玉川上水秘話』を読んで

約束の奔流―小説・玉川上水秘話

とても貴重な小説だと思いました。

そもそも小説の題材として取り上げられることの少ない玉川上水。
それでもあえて玉川上水を扱うとしたら、普通は玉川兄弟を主役にし、困難に立ち向かっていく実直な人物として描くことを選びたくなるものだと思います。


しかし、この『約束の奔流―小説・玉川上水秘話』では玉川兄弟はなんと脇役

工事に携わって玉川上水開削を影で支えた石工・大工たちがこの物語の主役
玉川兄弟、特に兄の庄右衛門は、悪人とまではいきませんが、下で働く人間への気遣いができているとは言い難い、小物臭のするキャラクターに仕上がっています。

そもそも資料の少ない玉川兄弟。こんな視点があってもおもしろい!

玉川上水完成後、玉川姓と水元役も与えられた庄右衛門・清右衛門兄弟ですが、3代目になると仕事の不正により解任されてしまいます。
この小説に登場する玉川兄弟なら、3代目の不正も納得できてしまうかも...


松浦 節『約束の奔流―小説・玉川上水秘話』
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